本来の(三者協働による)地域猫活動は、
「地域猫」という言葉の生みの親でもある
横浜市の行政獣医だった黒沢泰氏をはじめ、
東京都新宿区のカリスマ職員だった高木氏、
練馬区の熱血行政マン、石森氏といった行政職員によって
提唱され、推進されてきました。
いずれも都市部。人口密度の高い自治体です。
三氏は現在も、全国各地に出向かれ、
地域猫活動の普及に努めていらっしゃいます。
猫のふん尿や鳴き声の苦情は自治体共通の悩みです。
苦情者と愛護家の間を取り持つ施策として考え出されたのが、
或る意味、苦肉の策でもある地域猫活動です。
ふん尿などの野良猫トラブルを環境衛生の問題として捉え、
地域住民によって解決しようという考え方です。
TNRした野良猫を一代限り地域住民が管理します。
行政サイドの発案というのが地域猫活動の特徴です。動物愛護、動物福祉の観点よりも、環境問題として
捉えており、狂犬病予防法などの法的な縛りがないため、
猫の保護や譲渡といった活動は含まれていません。保護譲渡活動がボランティアの負担になるから、
とも言われますが、トラブルが起きがちな保護譲渡にまで
手を広げたくないという側面も窺えます。
「保護をしない」は、行政の都合でもあるのです。
野良猫が邪魔者扱いされずにすみ、共生をめざした活動なので、
愛護団体やボランティアも地域猫活動を歓迎しました。
行政とともに普及に努めている団体もあります。
地域猫活動が提唱されたのは、もう20年も前のことで、
当時は今のように優れた猫用の捕獲器はまだ
ありませんでした。
人に馴れていない子猫を捕まえるのは大変で、さらに、
野良猫の数が多すぎて保護できるキャパを
超えていたという実情もあります。
しかし、地域猫活動が提唱されるずっと以前から、
地域のボランティアの多くは保護・譲渡をしてきました。
生後2か月の子猫を手術してリリースしたところで、
その子猫が無事に成長できる確率は低いのです。
そこで、地域猫活動が世に知られるにつれ、
ボランティアの間で、
見守り管理と保護譲渡をセットで捉える解釈がひろがりました。
譲渡できる子猫などはなるべく保護し、
譲渡できない猫だけを地域猫活動の対象とする。
これは自然な成り行きと言えるでしょう。
もともと人間対応が苦手なボランティアは多いですから、
行政が町会など、地域団体との話し合いに消極的な場合、
地域団体を挟まずに活動を進め、相談を受ければ、
ボランティアが他の地域まで出向いてTNRし、
地域住民(相談者など)がエサをやるというかたちが
定着してきました。
近隣の住民の了解を得ない場合も多く、
TNRをせずに、エサだけを与えて「地域猫活動」
と称する極端なケースさえ出現しました。
そしていつの頃からか、地域猫活動と保護譲渡活動
という二つの活動に区別されるようになりました。
けれど本来、動物福祉的な側面から、
多くのボランティアにとって、これらは
一つの活動であったのです。
まぎらわしいのは、
「保護をしない」行政の地域猫対策を積極的にPRしつつ、
保護譲渡を行っている団体です。
筆者としては、保護に賛同しますが、
保護をするなら、
行政的な「地域猫」の看板(建前)は外すべきでしょう。
さらに、「真の地域猫」(地域猫原理主義)を標榜するボランティアが
実際には積極的に保護をしているのも不可解です。
ボランティアの言行不一致もまた、
地域猫活動の誤った解釈を生み出していると言えます。
(m)
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- 2017/12/25(月) 19:26:41|
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昨日は、「地域猫原理主義」について書きました。
この定義に基づいて、
地域猫活動を成功させるための3つの条件を記します。
1.行政の積極的な取り組み不妊去勢手術の助成金も含め、広報や住民団体への
働きかけなど、行政の意欲的なアプローチは
地域猫活動の核となります。
・意欲的な職員はいるか?
・マンパワーは足りているか?
・地域猫活動を正確に理解しているか?
2..地域団体が機能しているか?地域団体とは、自治会や町内会といった地域の要となる
組織です。
地域団体が住民に働きかけることにより、
地域猫活動を円滑に進めることができます。
3. 対応できるボランティアはいるか?地域猫活動は、住民を主体とした活動ですが、猫の捕獲や搬送、
活動のノウハウをボランティアから学ぶ必要があります。
上記の3条件を満たし、継続することによって、
本来の地域猫活動は時間がかかったとしても、
野良猫の減少、糞尿被害などの軽減へとつながります。
逆に、地域猫活動が上手くいかない地域の特徴は、
3条件の内、どれかが欠ける場合です。
例えば、行政が消極的。
自治会や町会などが機能しておらず、
住民を巻き込むことが難しかったり、
猫のために十分な時間を割けるボランティア
がいなかったり…。
お住まいの自治体、地域はどうでしょうか?
概して、地方では、必要な3条件が揃わない場合が
多いはずです。
加えて、不妊去勢すべき野良猫の数が相当数
いるということも、ハンディとなります。
正統な地域猫活動の態勢を整える前に、
とにかくTNR(捕獲・不妊去勢・リリース)を急がねば
猫は待ったなしで増えます。
3者協働態勢を重視するあまり、
以下のようなケースもあります。
http://nekonoyubin.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-caa4.html以下、引用。
「この現場がこれほどひどい状態になったことについては、
新宿保健所にも責任があります。
新宿区は地域猫活動の推進にもっとも熱心な自治体のひとつですが、
そのやり方には大きな問題があります。
それは、住民が猫の被害に音を上げるまで行政は事態を放置し、
住民の中から地域猫活動のボランティアが
名乗り出てくるのを待つというやり方です。
(中略)
まず第1に西新宿には住民といえる人が
ほとんど存在していません。
第2にすでに現場の猫の状態は、
手の施しようのない状態になりつつあり、
地域住民より先に猫と我々のようなボランティアが
音を上げてしまいます」
(引用おわり)
上記は地域猫の3条件を満たしていない地域
の一例です。
端的に言えば、正統な「地域猫活動」は都市向きであり、
苦情が行政に寄せられて始まる傾向があり、
東京都であっても、団地や商店街、下町といった
管理組合や商店会などが存在する地域で成り立つ
ことが多いようです。
住宅地でも可能ですが、やはり3条件のどれかが欠けると、
ボランティアにばかり負担がかかる活動となったり、
TNR+エサやりだけの見守り活動となってしまいます。
※地方でも都市部で、3条件を満たす場合には、
地域猫活動は可能です。
3条件が揃わず、しかも野良猫の頭数が多く、飼い方も不適切な
地域は、調整に手間取る地域猫活動は不向きです。
徹底的なTNRとともに、適切な飼い方(不妊去勢・マイクロチップ普及)
の積極的な啓発が優先されるべきでしょう。
地域猫活動は「地域性」と密に関係しているとも言えます。
(m)
(つづく)
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- 2017/12/22(金) 22:45:01|
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ご存じですか?
昨今、SNSなどで、ときどき見かける
「地域猫原理主義」という言葉の意味。
「地域猫活動の原点回帰」
というふうにも表現されます。
これは言い換えると、いま一度、
「地域猫」の本来の定義を明確に、ということです。
本来の「地域猫」活動は、三者協働を意味します。
三者とは、行政、住民、ボランティアです。
三者が協力し、地域住民の理解を得て、
人と共生する猫を「地域猫」と称します。
では、皆さんのお住まいの地域で、この本来の
「地域猫」はどれくらいいるでしょうか?
地域猫原理主義を貫いている自治体や住民、
ボランティアはどれくらいいるでしょうか?
1990年代後半、横浜で行政獣医であった黒沢泰氏により
生み出された「地域猫」という言葉。
誕生から20年を経て、環境省が推奨したり、
猫対策として掲げる自治体も増えてはいますが、
実際には、どれほど広がっているでしょうか?
またそれは、殺処分削減に、どれほど貢献しているでしょうか。
地域猫原理主義という言葉が唱えられる背景には、
「地域猫」という言葉だけが近年、一人歩きをして、
TNR活動=地域猫活動と誤解されていたり、
極端な場合は、地域にいる猫=地域猫と捉えられたりもします。
その一例が本日(2017年12月21日)の朝日新聞に掲載された、
「人間との信頼築き 地域猫に」という記事。
筆者は犬猫問題に精通しているO記者ですが、
「TNR活動が地域猫活動として広く行われている」
という誤った記述があります。
実際、活動年数の長い活動家でも誤解している方は
大勢いらっしゃいます。
地域猫原理主義者しか、本来の意味を把握していない、
と言っても過言ではないくらいです。
残念ながら、「地域猫」という言葉は
「殺処分ゼロ」という言葉と同様、
今後も誤解され、
一人歩きを続けることになるでしょう。
それはなぜかと言うと、まず、その響きの良さ。
そもそもが誤解を招きやすい言葉であること。
加えて、机上の理論では理想的な解決法に思えること。
第2の理由は、実際に地域猫原理主義を実践、継続する
行政やボランティアの数の少なさです。
東京を見渡しても、厳密な「地域猫活動」を
実践している地域は、かなり限定されているように
見受けられます。
数回に分け、「地域猫活動」について
経験と見聞にもとづき、
連続記事を書きます。
関心のある方はぜひご一読ください。
(m)
テーマ:動物保護 - ジャンル:福祉・ボランティア
- 2017/12/21(木) 23:20:23|
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こちらの記事ですが、内容からして、
知識を持たない、調べもしない記者の筆
であることが一目瞭然です。
猫殺処分ゼロ達成の先駆け
千代田区と区民が二人三脚で歩んだその道のりとはhttp://petokoto.com/795飼い主のいない猫活動の初心者や一般人を
対象にしたようなトークですが、
記事の内容はそのとおりですし、
千代田区が「千代田ニャンとなる会」を核に、
飼い主のいない猫を減らす活動の先駆けとなったことも事実。
千代田区のボランティアの頑張りに敬意を表します。
ただ、「殺処分ゼロ」を毎年連続達成してきた裏側には、
※(東京都動物愛護相談センターは)
千代田区内で見つかった猫については、区の要請で区側に連絡し、
対応を任せている。(朝日新聞 2016.9.19)
つまり、ボランティアが引き取っているということですね。
誤解のないように述べておきますが、
これ自体はとても良い仕組みだと思いますし、
頭数が少ないとはいえ、傷病猫などの受け入れ態勢を整えておくことも、
なかなか出来ないことです。
けれど、それを人々に伝え、記事にしないことには、
情報として欠落しているのではないでしょうか。
こうした仕組みがなければ、こぼれ殺処分が出てしまいます。
さらに気になったのは、飼い主のいない猫の「殺処分ゼロ」
という数字にこだわりすぎること。
大半の猫、とりわけ子猫は、センターではなく、町中で死んでいます。
ノラ猫で無事に1歳を迎えられるのは2割弱ではないでしょうか。
それをよく知っているのもボランティアです。
記事は、副理事長(実質、当初より理事長)の言葉を引用して
締めくくっています。
「千代田区の事例がモデルケースとして全国に普及し、
殺処分が削減されて、動物愛護・動物福祉が
推進することを願っております」
千代田区の事例は理想ですが、極めて特殊でもあります。まず、石川区長という猫愛にあふれる首長の下、
飼い主のいない猫の殺処分ゼロを
千代田区のブランド事業とする区の強力な後押しがあり、
大手企業が集まり、人口はたったの5万人という
特殊な自治体で、予算をふんだんに取れる潤沢な財政・・
そして、強力な区の広報戦略・・
(※小池都知事が「猫まつり」を訪ねたのは区長選の絡みです)
「千代田モデル」、すごいわ~、うらやましいわあ~
と、ため息をついている猫ボランティアさんは多いと思います。
ただ、千代田区のケースは特殊な条件が重なり合った結果であり、
同様に他の自治体で実現させるのは難しいのも事実です。
冷静に、お住まいの自治体の状況に見合った
現実的な方策を考えていく必要があると思います。
※TNTAなんて無理、TNRが精一杯の地域も多いでしょう。
※2001年に千代田区が事業をスタートさせた時点での殺処分数は
79頭。そもそも他自治体と比較して極めて少なかったのです。
そこで、参考になるのは、千代田区のように、最初から行政が
やる気満々だった自治体ではなく、
東京なら国立市のように、行政が消極的で、そこをなんとか
ボランティアが働きかけ、仕組みや制度を構築していったような
自治体でのプロセスやノウハウを知ることだと思います。
案外、そういう自治体も多いのではないでしょうか。
先述したように、千代田区の方針やボランティアの活動に
敬意を払いつつも、千代田区のブランド戦略の過剰なPRと、
それを安易に受け売りする記事には辟易としてしまいます。
(m)
テーマ:動物保護 - ジャンル:福祉・ボランティア
- 2017/05/05(金) 22:51:41|
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山梨県庁の敷地内に猫が増え、
猫を目当てに写真を撮りに来る人もいる一方で、
近隣からは苦情も。
山梨県庁が猫の新名所に
猫ファンVS近隣住民 知事は「共生」表明産経新聞 11/21(月)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161120-00000531-san-soci
(写真 産経新聞)
山梨県庁が、増える”県庁猫”に頭を痛めています。
知事が「共生」を表明されたそうですので、
動物愛護推進員(委嘱されていますか?)あるいは、
猫のボランティアを募り、早急に不妊去勢手術を
実施するべきと思います。
そのうえで、共同で見守り管理をし、
通りがかりの人などによる
むやみなエサヤリを禁止し、
「飼主のいない猫との共生」を実現させてください。
これから春にかけて、猫は繁殖期を迎え、
現状のまま放置すると、来春には一挙に頭数が増えます。
ボランティアの協力を得て、譲渡できそうな猫は
動物愛護の面からも、里親を探してください。
屋外での暮らしは、のんびりしているように見えても
猫にとっては過酷です。
(m)
テーマ:動物愛護 - ジャンル:ペット
- 2016/11/25(金) 17:45:58|
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