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動物との共生フォーラム

Friends of Nature & Animals Forum

「表裏井上ひさし協奏曲」西舘好子著 ~妻の修羅、作家の孤独~

読書の秋、というには、まだ暑すぎる今日このごろ・・

西舘好子著 「表裏井上ひさし協奏曲」 (牧野出版)

作家・井上ひさしの家庭内暴力(DV)のすさまじさ。

ガンに侵され、死の床にあっても、娘二人との面会を拒絶。
二人は、葬儀に参列することも、かなわなかった・・

前妻の著者が、「井上さん」と記しているのは、
歳月のなせる距離感か、醒めた感情から生じる客観なのか・・
作家であり、かつて夫であった人への感慨は感じとれるが、
郷愁や思慕といった情愛は、あまり漂っていない。
それは、著者が、生粋の江戸っ子である潔さによるのかもしれない。

井上ひさしは東北、山形の出身。西舘さんは、浅草橋かもじ職人の一家に育った。
生まれも、育った環境も、もって生まれた感性も、まるで異なる。
その違いは、作家にとっては大きな魅力であり、憧れでもあり、二人をあっという間に
結びつけたきっかけとなったが、
夫婦関係に齟齬が生じてくると、対立、ひいては、破綻の決定的な要因となったようだ。

肉親の愛に恵まれず、孤児院で子供時代を送った井上氏は、
温かい家族の団欒にあこがれ、西舘さんの家族を題材にして、
いくつもの作品を書いている。
しかし、同時に、彼らの団欒を妬み、憎みさえして、
その輪に自らが加わることはなかったという。

およそ作家というものは、天性わがままな子供であり、
見守り、あやし、なだめてくれる母性を身近にもとめる。

おそらく夫婦の亀裂は、西舘さんが「こまつ座」のプロデユーサーとして、
井上氏の配下から脱け出し、自身の人生をイキイキと歩みだし、
座付き作家でもある井上氏が、ひとり置き去りにされたような孤独感を
抱いたことに始まるのではないだろうか。

年下の舞台監督との不倫は大々的に報じられ、
出版社は作家の名声を守ろうと躍起になり、、
西舘さんはバッシングを受けた。
当初、この恋愛を、夫に相談していたのだという。
井上氏は、表向きには、穏やかな対応をしていたようだが、
ある日、一転して、凄絶な暴力が始まる・・
この時点で、この夫婦に恋愛感情が残っていたのかは分からない。
おそらく、同志、仲間という絆ではなかったか・・。

井上氏の嫉妬と屈辱は、彼のプライドからくるものだ。
妻が、年下の、自分の才能にはほど遠い
と見下している男に恋したことにある、と思う。

夫婦は別れた。
夫婦の愛憎は、夫婦にしか分からないというが、
この本を読んでも、井上・西舘夫婦の心髄は茫漠としている。

あとがきに代えて、長女の都さんが、10ページほどのエッセーを
書いているが、父親への思いが切々とつづられていて、胸を打たれる。
長女は、母(西舘さん)は、自分が幼い頃から「不安な人」だったと書いている。
父ではなく、母。
痴漢を自ら捕らえようとして殴られたり、幼なじみが逆恨みし、
「皆殺しにしてやる」と攻撃されそうになったり、
手首切り、睡眠薬の飲みすぎ・・
西舘さんも、ただならぬ女房であり、母親であったようだ。

ところで、井上ひさしは、「異常なほどの猫好き」だった。
娘たちも野良猫をかわいがり、庭には、何匹もの猫や、飼い犬、野良犬が
住みついていたらしい。

井上氏の再婚相手(井上氏の母は共産党の支部長)は、
共産党の大物議員の娘。
むしろ、こちらの家族の方が水が合ったのかもしれない。
その奥さんの姉は、ガンで急逝された米原万理さん(作家)という才女である。
米原さんは、かつて、ロシア語通訳の大御所でもあり、
家人とも知己で、毎年、年賀状をいただいていたが、
米原さんも、大の猫、犬好き。
年賀状にも動物のことが書いてあったのを憶えている。



(m)
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コメント

西舘好子の実態

71才にもなって今だに男のつまみ食いが止まらないようです。あちこちでの噂話しではなく、実際ホテルに誘われた人々から話しを聞きました。

井上ひさしの怒りは、自分のプライドを傷つける程の西舘好子の男ぐせの悪さにあったのだと思います。自分の実態を本には書けないのでこの本を読んだだけでは想像がつかないと思いますが、当時も原稿を取りに泊り込んでいる複数の編集者と肉体関係を持っていたようです。
  1. URL |
  2. 2011/09/29(木) 22:21:58 |
  3. ポチです。 #-
  4. [ 編集 ]

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