日中関係/村上春樹氏、朝日新聞に寄稿。

2012年9月28日。村上春樹氏が朝日新聞に寄稿されました。
尖閣をめぐる日中の対立についてーーー

~魂の行き来する道筋~

「 」内は記事より抜粋。

「文化の交換は『我々はたとえ話す言葉が違っても、基本的には感情や感動を共有しあえる人間同士なのだ』
という認識をもたらすことをひとつの重要な目的にしている。
それはいわば、国境を越えて魂が行き来する道筋なのだ」

「領土問題が実務課題であることを超えて、「国民感情」の領域に踏み込んでくると、
それは往々にして出口のない、危険な状況を出現させることになる。
それは安酒の酔いに似ている。
安酒はほんの数杯で人を酔っ払わせ、頭に血を上らせる。
人々の声は大きくなり、その行動は粗暴になる。
論理は単純化され、自己反復的になる。
しかし賑やかに騒いだあと、夜が明けてみれば、あとに残るのはいやな頭痛だけだ」

そのような安酒を気前よく振る舞い、騒ぎを煽るタイプの政治家や論客に対して、
我々は注意深くならなくてはならない」

「安酒の酔いはいつか覚める。
しかし魂が行き来する道筋を塞いでしまってはならない。
その道筋を作るために、多くの人々が長い歳月をかけ、
血の滲むような努力を重ねてきたのだ」              (抜粋おわり)
                                
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今回の対立のきっかけは、「政府にほえ面をかかせてやる」と、
石原都知事が、とつぜん尖閣諸島の購入を言い出したことにある。

知事はその折、中国による報復措置が、在中国の日本企業や、そこで暮らす家族、子供たちまで、
暴力におびえ、日本人とわからないよう息を潜めて毎日を送らなければならなくなる事態を
予期しただろうか。
そこまでは考えなかったとすれば、行政のトップとして無責任きわまりない。

また、野田首相は、今回の事態は「想定外だった」と発言したが、
政府には、海外に暮らす日本人の生命と財産を守る責務がある。
事前に防衛策を打って然るべきだった。

しかも、尖閣の国有化を決めた時期は、「盧溝橋事件」や「柳条湖事件」の時期と重なり、
胡錦涛主席のメンツまでつぶした。
中国人にとって、メンツがどれほど重要なことか、
日本による侵略を想起させるような時期に国有化の決定をしたことも、
歴史や国際感覚に疎いとしか言いようがない。

安酒を気前よく振舞って、国民を煽っているのは政治家や論客だけではない。
マスコミもまた、連日、過熱した報道を続けている。
日本ではあまり報道されていないが、日本人による暴力を受けた在日の中国人もいる。

日本政府がまずすべきは、日本企業や商店が被った被害の賠償を堂々と中国政府に要求することだ。
デモと破壊行為はちがう。
公安は、暴徒による破壊と略奪を積極的に止めようとはしなかった。
もし日本人が横浜中華街の店を壊し、商品を略奪するのをニュースで見たら、中国人はどう思うのだろう・・
日本に暮らす中国の人たちだって不安にちがいない。

そして日本政府は、尖閣諸島の領有に関しては、論拠となる文書などをきちんと示して
諸外国に説明すべきである。
「わが国固有の領土」と言うだけでは、国際的にまったく理解されない。
中国からの反駁にも、ひとつひとつ証拠をあげて、反論すべきである。
それらは、日本語、中国語、英語のみならず、さまざまな言語で発信する必要がある。

先日、50代の中国人の方と話した折、
「私が若かった頃の愛国主義と今の中国の愛国主義とはちがう。私たちの世代は、家族や親戚が
日本軍に殺されたりしたけれど、
それは日本の政府がしたことであり、日本人も多くの犠牲をはらった、と教わった」とおっしゃった。

政府と民は別。
政府の間違いを質すのが国民の努めでもある。

だから私たちは、政府の対立を、芸術や文化や人的交流の分野にまで持ち込むべきではない。

日本の企業が中国で活動できなければ、職を失うのは中国の人々である。

中国と日本が対立して良いことは何もない。

村上氏の文章が中国のネットで取り上げられることを望んでいる。

(m)
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