「震える牛」に続き、私にとっては二作目となる相場秀雄氏の著作。
本のオビにある通り、今回も「事件意外はノンフィクション」仕立て。
大震災の被災地を題材にするということは、それなりに込められた思いと道義が
求められるが、東北を舞台に作品を書いてきた著者だけに、気構えは充分といえる。
「震災を風化させたくない」
登場人物や著者が幾度となく口にする言葉。
この作品のメッセージは、この言葉に尽きるだろう。
実際、多くのページが被災地の状況や被災した人々について割かれ、
ミステリーとしての展開は作品の後半まで遅々として進まない。
被災された人々の心に寄り添いたいと願う著者の気持ちは伝わって来るが、
震災2年後と震災直後を頻繁に往来する複雑な構成は読者を振りまわす。
ネタバレになるので、あまり書けないが、作品のキーワードは「貧困ビジネス」。
(以下、文中より)
「前夜、東京の遊軍長から、一部のNPO法人が持つ裏の顔を聞かされた。
・・(略)<マル暴御用達のNPOがいくつもあるぞ・・そもそも、国が緩い
基準作ったから、抜け道だらけだ>・・(略)・・経理処理が一般の事業法人よりも格段に緩いため、
支出入金の管理が杜撰な法人がいくつもある・・」
(引用おわり)
震災直後、マスコミは、身内や友人を津波で亡くしながらも、懸命に耐え、粛々と
炊き出しの列に並ぶ地元民や、被災地へ通うボランティアの姿を
「これほどの被害に遭っても耐え忍ぶ人々」「善意のボランティア活動」として、
美談を撒き散らした。
しかし現実はどうだったのか・・。
福島では、原発事故で住民が避難した直後から空巣がはびこり、多くの商店
や民家は散々な被害にあった。
住民の一時帰宅の際、ある商店では、札を抜かれたレジスターが道端に放り出されていたという。
イノシシやネズミばかりが悪者あつかいで報道されるが、
人の不幸や弱みにつけ込む醜い連中のことは十分に報道されてきただろうか。
復興景気で風俗店が繁盛しているという事実もある。
膨大な復興予算と流用の問題。
願わくば、復興予算にたかる「シロアリ」の実態をさらに深くあぶり出して
欲しかった。
(オビの宣伝文句は前作より自嘲気味。「顔のない男」・・作品を最後の方まで
読み進んで、ようやく意味が分かりました)
参考:
貧困ビジネスhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B2%A7%E5%9B%B0%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8月中、長野県の山中に居り、ネット接続に問題があってブログをお休みしました。
今夏は3年ぶりにキツネに遭遇。たいそう痩せていました。
タヌキの親子にも出会いました。子ダヌキは草むらで遊んでいましたよ。
幸いクマには会いませんでしたが、クマ鈴は必携。
長野県では、今年もクマが民家の近くや果樹園に出没し、人身事故もあって、加害グマかどうか分からないまま、
捕殺されています。事故や農業被害を防ぐためにも、クマの専門家によるモニタリングや電気柵の設置などを
さらに進め、クマの無差別な捕殺を極力減らして欲しいものです。
今秋、山の実りはどうでしょうか。家の周りには例年なら、まだ緑色の栗がたくさん落ちていますが、
今年は見かけませんでした。たまに落ちていても、実の無い小さなイガばかり・・。
本日、9月1日より、改正された動物愛護管理法が施行されます。
(m)
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テーマ:読書記録 - ジャンル:小説・文学
- 2013/09/01(日) 18:29:03|
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