日本は、名馬といわれる競走馬を数多く輩出してきた。
記憶に新しいところでは、昨年の有馬記念で引退したオルフェーブル。
輝かしい記録を残し、種牡馬となった馬はしかし、競走馬のほんの一部にしか過ぎない。
勝てない馬、それ以前に競走馬には向かないと判断された馬、仔馬でさえも屠畜され
馬肉になっているという事実は、あまり表だって語られることはない。
競馬場の厩舎から、「乗馬」として姿を消す馬たち・・
そのすべてが乗馬になるわけではないという。
馬肉にされずとも、斃死、つまり病気で死んだり、レース中の事故で死ぬ馬たちも多い。
人と馬との関係の歴史は古い。農耕、戦争、ギャンブル・・
競馬好きの人々は名馬を讃美するが、レースに勝てず、
ひっそりと屠畜されていった大半の馬たちには思いを馳せるのだろうか・・
松林要樹氏の「馬喰(ばくろう)」は、大震災の原発事故により被災した相馬野馬追の
馬たちの複雑な状況を記録し、野馬追の実態についても触れ、
さらに、馬喰と言われる人たちのことや、屠畜の様子なども記している。
(著者あとがきより)
「馬を見つめることで私自身、人間とは何かを振り返るきっかけを作ることができた。
人間が、このような社会を築くに至るまでに、
どれだけの馬が戦争や労働現場で、人間に奴隷のようにこき使われ、
命を落としてきたのだろうか。
人間社会の発展は、馬の犠牲の上に成り立っている・・
この取材を始めるまで、この当たり前のことに無自覚だった。
私たちは、物言わぬ馬たちの犠牲の上に生きている。・・・」
今年は午年。馬ほど、人の欲望に翻弄される生き物はいないのではないだろうか。
馬が好きな方にはぜひ読んでいただきたい一冊。
(m)
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テーマ:動物愛護 - ジャンル:ペット
- 2014/02/10(月) 19:58:31|
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