ゾウのはな子一周忌に考える日本の動物園・その2

ゾウのはな子一周忌に考える日本の動物園・その1
http://doubutsuforum.blog.fc2.com/blog-entry-725.html


↑上記の記事のつづきです。
 ※文体を変更しました。


今年4月4日、群馬県の桐生が丘動物園でメスのゾウ、
イズミが53歳で死亡した。
小さなコンクリートの飼育場で生き続けたイズミは、
人知れず、ひっそりと、この世を去った。

狭小な全国の飼育場で、十頭を超えるゾウが
今もなお飼育されている。
これらの動物園の多くは戦後の高度成長期に造られた。
ゾウの寿命と、戦後の動物園がたどった軌跡は重なりあう。

当時、動物園や遊園地は、家庭向きの娯楽に打ってつけの
施設だった。安い料金で、珍しい動物を見ることができる。
しかし、その後、人々の娯楽は多種多様なものとなり、
動物園は客を失っていった。
遊園地は潰せるが、動物園は簡単には潰せない。
赤字を垂れ流し、かと言って、大規模な改修もかなわず、
古くて狭い飼育場のまま動物を飼い続け、今に至っている。

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動物園の数で言えば、日本は世界で3番目。人口あたりで
見れば、世界一、動物園の多い国である。
そして、日本動物園水族館協会に属する動物園の8割は
地方自治体により運営されている。
自治体運営の動物園は、都市公園法の下にあり、
動物は公園のベンチや遊具と同様、「物」という扱いになる。
入園料は低料金に抑えられ、赤字は税金でカバーされる。
地方財政の問題もあり、大部分の動物園が根本的な
エンリッチメント化には消極的だ。
財政的に飼育施設の修理もままならず、マンパワーについても、
飼育経験の無い人が役所から派遣されているような園もある。
何とか改革を試みている動物園もあるが、来園者を増やすのは
容易ではないようだ。

一方、動物園にとって、動物が死亡しても、
新たに動物を購入するハードルは高くなる一方だ。
毎日新聞(2016/7/6)によれば、
はな子のようなアジアゾウは、20年前には1300万円だったが、
今では3500万円。ホッキョクグマは、400万円から6000万円に
アップし、ゴリラは300万円から1億円に高騰している。
高額すぎて購入できない、となれば、国内繁殖をするしかないが、
これも遠隔地の動物園への移送などコストと手間がかかり、
動物への負担も軽視できない。
しかも、動物園育ちの動物はi育児放棄などの問題事例もある。

自然界では、絶滅が危惧される動物種が増え、欧米の動物園
は種の保存に動物園の存在意義を見出している。
同時に、動物福祉の考え方も進み、群れやファミリーで生息する
動物を一頭のみで飼育しない、あるいは、広大なエリアを
必要とする動物は園で飼わず、サンクチュアリに移動させる
といった動きも次々と見られる。
その一方で、科学にこだわるあまり、健康で何の問題もない
若いキリンを平凡なDNAという理由だけで殺処分したり、
ライオンや他の動物も余剰動物として処分している。


marius_before.jpg
コペンハーゲン動物園で殺処分された2歳のマリウス


人寄せパンダとはよく言ったもので、珍しい動物や、
人気のある動物を動物園は欲しがるが、それらの価格は
高騰し、シカやウマといった”平凡な”動物は余っている。
さらに、高齢動物ばかりで、赤ちゃん動物がいなければ、
人は来てくれない。
種の保存を存在意義として唱えつつも、経営的に矛盾を
抱えているのが、今の動物園の実態だ。

旭山動物園は、動物の習性や活動を魅力的に見せる
工夫をして成功したが、”見せ物小屋”的な発想である
ことに変わりはない。
国立動物園の構想も頓挫してしまっているように見える。

さらに、動物福祉の面から言えば、北海道のような極寒の
地で、アフリカゾウなどを飼育するのも問題であり、
その土地の温度や風土に適した動物を飼育するのが
望ましい。
また、絶滅してしまった動物を動物園で生かし続けても、
それらが野生に帰ることがなければ、動物園は博物館
と同一になる。
未来には、野生動物を動物園でオリに囲って鑑賞する
こと自体が批判され、廃れてしまう可能性もある。

imagesトキ空
中国産を人工繁殖させ、佐渡に放たれたトキ


日本の動物園は、長い長い、過渡期の渦中にある
ように見受けられる。
赤字を垂れ流しながら、中途半端に存続する多くの動物園。
動物福祉の面からも、いま一度、その在り方や将来を見据え、
発想の転換も含めた、思い切った改革が必要ではないか、
それが、はな子という、戦後の動物園を象徴するような一頭の
ゾウを通して、動物園関係者のみならず、私たちが考えるべき
ことではないだろうか。


(m)
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