動物との共生フォーラム

Friends of Nature & Animals Forum

ナタリー・ポートマン主演「ブラック・スワン」

終了間近になったので、「ブラック・スワン」を観て来ました。
ナタリー・ポートマン、きれい!ストーリー、怖い!・・・シンプルな映画です。
有名なバレエ、「白鳥の湖」の白鳥と黒鳥のコントラストをモチーフにしているので、分かりやすい。
バレリーナのニナ(ポートマン)は念願かなって主役に抜擢されたものの、
王子を誘惑するダークで、セクシーな黒鳥の役づくりに苦しみ、
精神を病んでいくと、映画の解説にはありますが、
実際には、ニナは、ずっと前から、精神を病んでいたのです。
原因は、元バレリーナの過保護な母親。
バレエ映画のように見えて、実は、母と娘の近親憎悪がテーマです。
index黒鳥

この映画から思い浮かんだのは、まず古典映画の「赤い靴」。
主役に選ばれたヒロインは恋に破れ、死を選びます。
履いたら、永遠に踊り続けなければならない、「赤い靴」の物語が彼女の悲劇を暗示します。
設定はパターンながらも、人間の、ヒューマンな悲しみがありました。
「ブラック・スワン」には、カタルシスがない・・
アン・バンクロフトとシャ-リー・マクレーン、現役のバレリーナと引退して主婦となったバレリーナ
という設定で、二人の大物女優が競演した「愛と喝采の日々」ほど、葛藤を掘り下げてもいないし、
サイコ・サスペンスとして、この映画はむしろ、
「ミスター・グッドバーを探して」や「ルームメイト」の系統でしょうか・・
ニナが引きずられる(観客も)妄想の描き方にも新味はありません。
やたらにヴィジュアルなインパクトに傾倒していますが、
展開がスピーディーなので、飽きさせません。
ラストシーンでさえ、妄想なのか、現実なのか・・
こういう結末は、ちょっとズルい・・

母親の愛憎(束縛)から自分を解放しようとするニナの苦しみは凄絶です。
メルヘンチックな自室に飾られたオルゴールを叩き落し、
ぬいぐるみをかき集めて、ダストシュートに捨てる・・
止められない自傷行為・・
「母親は自分を産んだためにバレエをあきらめ、プリマになる夢を自分に託した・・」
これがニナの心を苦しめる呪縛です。
母親はニナを愛しながらも、憎らしい言葉を言い放ちます。
「主役になれなくたっていいじゃないの。4羽の白鳥の役ならもらえるかも・・大人の(3羽の)白鳥の役だって・・」
この嫌味に、ニナはひどく傷ついたはずです。
「白鳥の湖」では、4羽の白鳥は下っ端が踊る役だし、3羽の白鳥の役もたいしたことはない・・
しかし、映画の後半、主役を射止めたニナは、母親に強烈な反撃を食らわせます。
「お母さんは群舞だったじゃない。私は主役よ」
こうしたセリフのせめぎあい、傷つけあいのつらさは、バレリーナの母娘だからこそ・・
芸術の世界につきまとう狂気、妬み、憎しみ、といった負の感情を、
えぐり出し、誇張し、おどろおどろしく、ヴィジュアルに見せます。

159白鳥

実際、バレエの舞台でも、「黒鳥」の役をどう表現するかは、
しばしば論じられてきました。
王子は、黒鳥(オディール)を白鳥(オデット)と間違えて、
結婚の約束をしてしまうわけですから、
白鳥にうりふたつのはずだし、下品な誘惑であってはなりません。
20世紀を代表するバレリーナの一人となったシルヴィ・ギエムは、自分なりの異なった解釈で、
黒鳥を白鳥とあまり違えず、気恥ずかしそうに、チャーミングに、王子を誘惑しました。
けれど、観客は、古典バレエのお約束事で、やはり白鳥とのコントラストを黒鳥に求めてしまいます。

この映画で、一番びっくりしたのは、ウィノナ・ライダーが、引退するバレリーナ、べスを演じていたこと。
なんだか、魔女みたいで、化けすぎ・・
ウィノナといえば、「17歳のカルテ」のヒロインで見せた繊細な演技・・
この映画には、アンジェリーナ・ジョリーがほぼ新人で出ていて、派手な演技力でアカデミー助演女優賞を
かっさらってしまい・・その後の二人は、明暗を分けました。
ウィノナ・ライダーには演技派として、今後とも、独自の境地を開拓していただきたいです。

ナタリー・ポートマンはエルサレム生まれのアメリカ育ち。ユダヤ系アメリカ人です。
「レオン」のマチルダ役で一躍注目されました。
ハーバード大学、イエール大学に合格して、ハーバードで心理学を専攻。その後、
ヘブライ大学大学院で中東問題を研究。コロンビア大学で講義もしています。
英語、ヘブライ語、フランス語、ドイツ語、アラビア語、日本語まで勉強したそうです。
天はいくつもの才能を彼女に授けたようです。
十代までバレエを習っていたものの、ニナを演じるにあたっては、15年のブランクがあり、
バレエの猛特訓をしたそうですが、白鳥の微妙な腕の動かし方など、
下手なプリマより上手。
子供のころから動物が好きで、加工品もゼラチンも食べない、完全な菜食主義者です。



d0198868_12374431ブラックスワン
この写真を見る限り、実は、いともたやすく、黒鳥も演じられるナタリーなのでした・・

余談ですが、黒鳥に向いた人が、白鳥を演じる方がずっと難しいでしょうね・・
この映画を見ていて、なんとなく、表現力の乏しかったころの安藤美姫と、今の
安藤を思い浮かべてしまいました・・

(m)
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