原田芳雄さん死去 「火の魚」

7月19日、俳優の原田芳雄さんが、亡くなりました。享年71歳。
この数年、名優が次々と死去され、淋しいです。

原田芳雄って、カッコよかったなあ・・ニヒルで、色気あって、存在感あって・・
デビュー作は、1968年の「復讐の歌が聞こえる」。
奇しくも、先日追悼記事を書いたピーター・フォーク主演「刑事コロンボ」の
放送が始まった年です。
あの頃ふうに言えば、アンチ体制のイメージを代表する俳優の一人でした。
老けた原田芳雄って、想像できなかったし・・

NHK・BSで追悼番組「火の魚」を見ました。2009年の作品。
広島局の制作で、イタリア賞を受賞しています。
原作は室生犀星。

(以下、ネタばれ含みます)

相変わらずカッコよく、老作家を老人っぽくなく、颯爽と、ぶっきら棒に演じ、
うまいなあ、と感嘆・・
編集者役の尾野真知子も、微妙な味わいをかもしだす、いい女優さんですね。

ドラマの後半で、尾野真知子がガンを患っていたことが分かりますが、
2008年にガンで余命宣告を受けた原田芳雄は、
どんな思いで、このドラマを演じていたのでしょう・・

追悼ドラマだったので、原田と尾野、ドラマの中で、
どちらに思いを寄せようか、とまどいますが、
珠玉の作品です。

ただ、ふたつ・・。

一つは、原田がいとおしんでいた(?)金魚を、尾野に魚拓にしてくれと頼む場面。
この作品のクライマックス的なシーンです。
尾野の病気をまだ知らない原田が言います。

「おんなじ魚だろ? じゃ何かい? 
この世には死んでいい魚と死んじゃいけない魚があって、
金魚は死んじゃいけない魚だと、おまえそう思ってんのか。
それで人間誰しも、自分が金魚だと思いたい。
鯛や鰯のように、死に値する存在じゃない。……え? 
だけどね、齢とりゃ分かるよ。人生なんてのァ、かつて自分が金魚だった、
それを魚拓にされるまでの物語だってことをな。
じつに意外で、ひどく残酷なんだよ。耐え切れるもんじゃないよそりゃ。」

老作家は、形骸化した自分の小説の象徴としての「金魚」を殺すことで、
(小説の主人公は「金魚娘」)
形骸化した自分に決別にようとしたのかもしれませんが、
そんなことで、苦闘していた時代の才気がとりもどせるわけはないし・・
作家の観念的なセリフに聞こえます。魚を「命」とは感じていない・・

死んでいい魚、とは言わないけれど、
私にとって、「死んじゃいけない魚」は存在します。
死んでいい命、とは思わないけれど、
「死んじゃいけない命」は存在します。

ガンを患っていた尾野はどんな思いで、
むせび泣きながら、金魚という「命」を殺し、魚拓をとったのでしょう・・
生きたいと願い、もがき、苦しんでいたから、
金魚を自分と重ね合わせ、いっそのこと・・?
生かさず、殺したのでしょうか・・
殺さずに、生かすのではなく・・?

どうも文学的なセンスに欠けるのです、私は・・
あのシーンが無くても、
充分に作品として味わえたと思うのですが・・
「8月のクリスマス」のように・・

でも、もし、自分が書いていたら、やはり金魚を殺したくなるでしょう。
作る側は残酷になれますから、
見る側は傷ついてしまいます。

二つめ。赤い、ゴージャスな、バラの花束。
これはいけません。
老作家は、自分の衣食住にこだわりをもっている人物に見えました。
お見舞いに、あんな花束は持参しないでしょう。

ガン患者さんは、匂いに過敏になっている方々も
いらっしゃいます。
あるガン専門病院では、花束の持込みを禁じています。

5月下旬から2週間ほど入院しましたが、
ドラマのヒロインのように、
若い女性のガン患者さんが多いのに驚きました。
ガンは着実に若年化しています。

ある病室で、30代後半とみえる女性患者が二人、
ひっそりと話していました。
一人の患者さんが、ポツリと言いました・・
「・・あぁ、なんかいいことないのかなぁ・・一応、緩和病棟を予約しておいた・・」

生きて、欲しいです。

(m)
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はじめまして

こんにちは。
めったに人のブログは読まないのですが、
原田芳雄さんが亡くなったことの寂しさ・無念さで
つい、ここにたどりつきました。

私は、語れるほど芝居を知っているわけではないのですが、
去年NHKで「火の魚」を見て、心を打たれ、原田さんの演技に
魅了されてしまいました。

あのドラマ、良かったですね…


緒方拳さん、谷啓さん、森繁久弥さんなど、
ほんとうに惜しい俳優さんが、次々と亡くなっていきます。

それが本当に悲しいです。
どうか彼らの遺した作品が、いつまでも愛されますように…。

またミーハーですが・・ご冥福を

また、ミーハーですんで恐縮でございますが、原田芳雄氏も、とてもいい俳優さんだと勝手に贔屓にさせていただいてましたので、私もショックでした。

ご冥福をお祈りします。

私の好きな俳優さんも、次々とお亡くなりになって、寂しい限りです。

原田芳雄氏は、寺山修司氏の作品や浪人街などで存じ上げてまして、火の魚、は、まだ見ておりませんで、機会があれば、拝見したいと思います。室生犀星は好きです。彼も猫好き作家さんでしたっけね?お話、室生犀星の金魚とはちょっと違うみたいかな?

ではではまた。acho

カオルさま

コメントありがとうございます。見終わって色々と考えさせられるドラマは、きっと奥が深いのでしょうね。
原田さんのドラマの最後のセリフ、[タバコ吸いてぇ!]は、案外ご自分の病気とかさねあわせでいたのかも…?

achoさま

山中におりますですよ。近くに犀星の夏の住まいなる、こじんまりとした、ワビサビの家がありますが、ここで猫を拾ったという話も読んだような…
昨日まで開店準備で慌ただしくしておりました。金魚の場面は原作と違うのですか…
原作も読んでみたいです。
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