動物との共生フォーラム

Friends of Nature & Animals Forum

【地域猫】~杉並区の「飼い主のいない猫対策」~

今回は杉並区の「飼い主のいない猫対策」について
書きます。
杉並区は昔から「地域猫」という言葉を行政の発行物に
あまり記載していません。
(2017年発行の活動ガイドブックには、「地域猫活動
(TNRと見守り)」という記載があります)

行政が地域猫セミナーを開催した記憶もありません。
なぜ「地域猫」という言葉を使わないのか、その理由は
定かではありません。
(口頭では使っています)

しかし、杉並区には真の地域猫活動を阻害する要因が
幾つかあります。
その一つは、町会や自治体などが形骸化し、住民との
繋がりが無いこと。
二つ目は、「自主」「個人」を良とする区民性が
役所や町会など、「お上」からの上意下達を嫌うこと。
(杉並区には600を超えるNPOがあり、住民運動なども活発です)
※管理組合のある集合住宅や商店会、一部町会など、
古くから住民同士の繋がりがある所で、
「地域猫」的な活動をしているケースはあります。

DSCN4475_convert_20180123173655.jpg
「飼い主のいない猫を増やさない活動ガイドブック」

杉並区の現役ボランティア最高齢は80代。
「地域猫」対策が発案される、ずっと昔から野良猫の
不妊去勢、保護譲渡や見守り活動をしています。
団体やライフワーク的なボランティアというよりも、
住民が個人、あるいは、地域で小さなグループ活動をしている
場合が多いようです。
※「地域猫活動」は肯定的に捉えられていますが、
いわゆる原理主義的な捉え方ではないと思います。

杉並区では、2004年より、「飼い主のいない猫を増やさない
活動支援事業」を行っています。
3人以上のグループで申請すれば、野良猫の不妊去勢、
ワクチン接種、ノミダニ寄生虫駆除、マイクロチップ挿入、耳カットが
すべて無料で獣医師会加入の動物病院にて処置してもらえます。
申請した猫全頭に助成が下りるわけではありませんが、例えば、
5頭申請したら、3頭は承認されるぐらいの割合で(メス猫優先)、
承認されなかった猫については、区内の無料TNR病院で
処置してもらうことも出来ます。

昨年、この事業の見直しがあり、新たに「グループ登録制」が設けられました。
あらかじめグループ登録をしておけば、1グループにつき、
年間3~5頭の猫に助成が受けられます(無料)。
さらに、春と秋にも、個人やグループを対象にした
申請を受け付けています。
こちらは、メス4000円、オス2000円が申請者の負担となりますが、
医療処置に関してはすべて同一です。
他にも、「モデル地区」や、「緊急対策枠」が設けられています。
事業の利用者には捕獲器の貸出もしています。

「杉並区 飼い主のいない猫を増やさない活動支援事業」
http://www.city.suginami.tokyo.jp/guide/kenko/doubutsu/1026931.html
※詳しくは、杉並保健所生活衛生課までお問い合わせください。
☎ 03-3391-1991
※「杉並どうぶつ相談員」による支援のご相談も上記の電話番号に
お願いします。


杉並保健所も猫のフン尿などの苦情に関して、
地域の公衆衛生上の問題として対応していますが、
「動物愛護・動物との共生」という視点も併せ持っています。

●TNRからTNTAへ

助成事業が開始された頃、杉並区から都動愛センターへの
猫の引取りは年間400頭ちかくありましたが、近年は譲渡・
返還、引き出しなどで、実質的に殺処分ゼロを達成しています。
※杉並区の人口は約56万。

杉並区は、その大半を住宅地が占めます。一戸建てが多い
地域で多いのは「庭猫」。
譲渡に向かない猫や、先住猫との相性などで飼えない場合、
庭に小屋を作ってもらうなどして、世話を受けている、
不妊去勢をした外猫のことです。
都市の住宅地ならば良くある見守り管理でしょう。
とくにオス猫は去勢すると人に馴れやすくなるので、年を経て
家猫へと”出世”し、屋内で看取られる猫も多いようです。
(頭数を増やすと苦情が出るので要注意!)

DSCN4479_convert_20180123174920.jpg
活動ガイドブックで捕獲器の掛け方を図解

TNR(捕獲し、不妊去勢してリターンする)が進み、
地域の猫の数が減ってくれば、次に目指すはTNTA。
(Trap.・Neuter・Tame(馴らす)・Adopt(譲渡)です。
屋外で暮らす猫の生活は極めて過酷です。
子猫の大半は、交通事故、衰弱、病気などで死んでしまいます。
成長しても、感染症、ケンカによる怪我、冬の寒さ、
人による虐待もあります。

そこで、杉並区の活動ガイドブック(2017年)では、
TNTA-子猫はなるべく順化し、人に馴れている成猫も
外に戻さず譲渡することを推奨しています。

杉並区では近年、住民の入れ替わりが顕著です。
高齢者が施設などに転出し、土地が更地化され、
跡に数軒の住宅が建てられ、新しい住民が転入しています。
かつては広い庭だったスペースが失われ、住宅は密集し、
人間同士の軋轢や、フン尿への苦情も出やすく、
屋外に居る猫にも、ますます住みにくい状況となっています。
また、新たに転入した住民に区の対策を知っていただくため、
行政による積極的な広報が肝要です。

更なる課題は、動物担当職員のキャパでしょうか。
昔と異なり、今は職員も現場に出向いたり、町会との折衝を担ってくれますが、
マンパワー不足は否めないように見えます。
このポストには、人と動物の問題に積極的に取り組んでくれる
フットワークの良い、車の運転の出来る職員が求められます。

★次回は連載記事の最終回。「まとめ&活動を始めたい方へ」です。

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  1. 2018/01/28(日) 21:18:40|
  2. 地域猫
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秋田県、クマの捕殺817頭!前代未聞の多さ。

秋田のクマ、推定生息数の6割捕殺 
「前代未聞」懸念も

https://digital.asahi.com/articles/ASKDP5R4PKDPUBUB010.html


秋田県でのツキノワグマの捕殺が12月までに
なんと、817頭に上っています。
前年度の捕殺は500頭ちかくでしたが、さらに大幅増。
レッドリストの危急種です。

昨年10月までの暫定値で、他県の捕殺数は多くても
100~200頭台なので、秋田県の捕殺数は突出しています。

これはもう明らかに、県民がクマパニックに陥っている証です。
一昨年の鹿角の人食いグマ事件の影響でしょう。
「クマに食べられる」「クマは人を殺す」→クマがいたら殺せ、
になってしまっています。
ちなみに、昨年のクマによる死者は1名でした。
これは遭遇事故で、クマが故意に人を襲ったのではありません。

日本ツキノワグマ研究所が「スーパーK」などと名づけ、
ことさら人々の恐怖心を煽ったせいもあると思います。
※同研究所によれば、未だ食害に加わったクマは残存して
いるとのことですが、これはあくまでも山中です。

捕殺数の多さから察するに、秋田県は本気でクマの
県内絶滅をめざしているとしか考えられません。
9年ぶりに冬季の猟まで解禁!
穴の中で冬眠もさせない。捕殺しやすい。
コグマもいることでしょう。

県民の恐怖心が収まるまでに、秋田県のツキノワグマは
いなくなるかもしれませんね。

けれど、長野県軽井沢町のように、夏場、町のあちこちに
出没しても、放獣やパトロールやゴミ出しの注意の徹底などで
事故を防いでいる自治体もあるのですから、
秋田県も、農地や人里にクマが近づかない対策などを積極的に
とれないのでしょうか。
やみくもに無害クマまで殺さず、
生息数などは、科学的なデータを採って検証してください。

あとはクマのテリトリーである山に入らないことですね、
と説得しても、人々はタケノコ採りに行ってしまうそうですが、
クマにも生存できる場所を残してやって欲しいです。
堅果類が不作で、山にエサが無く、空腹で人里に下りて
来ているのでしょうか。

(m)

追記:2018/1/9

岩手県からの情報です。ご参考までに。

「毎年クマによる人身事故が
毎年10件前後発生している岩手県では、
平成29年度は人身事故が16件17名起きています。
ただし、クマの捕殺数は272頭。
(2017年10月までの暫定値:環境省)。
幸い死亡事故は起きていませんが、
昨年はクマの出没が多かったにも関わらず、
岩手県民はパニックを起こさず、
行政や猟友会も冷静に対応していた
というのが私の感想です。
岩手県は(堅果類の豊凶調査に基づいて)
クマの出没予想を立て、
様々な媒体を使ってのクマ情報や注意喚起を
県民に行っています。
岩手県のクマの保護管理の取組の歴史と実績、
県民性や猟友会やNGOの取組、マスコミの報道姿勢などが、
秋田県と岩手県では異なる結果になったと思います」


★「地域猫」の記事はまだ続きます。

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テーマ:気になったニュース - ジャンル:ニュース

  1. 2018/01/08(月) 22:36:02|
  2. 野生動物 クマ
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【地域猫】~地域猫活動は殺処分削減に有効か?~

地域猫活動はそもそも猫に関する苦情対策
として行政サイドから発案されたものです。
地域のコミュニケーション活性化などの副産物
はありますが、殺処分の削減を狙ったものでは
ありません。

しかし結果的に、「飼い主のいない猫対策」が
活発な自治体における猫の引取り数は、
活動年数を経るにつれ、減る傾向にあると言えます。

※引き取り数の削減が「地域猫活動」によるものか、
保護譲渡に積極的に取り組んだ結果によるものかは
定かではありません。
自治体の熱心度、TNR, 地域猫活動、保護譲渡活動のすべて
が有機的に作用した結果、というのが筆者の見解です。

10年にもおよぶ長い活動年月を経た成功例もあります。

また、千代田区や国立市など、
引き取り数ゼロを維持している自治体もあります。
※千代田区は傷病猫も含めて、東京都より連絡を受け、
区のボランティア団体が引き取ることによりゼロを継続しています。

但し、小金井市のように対策が発展途上で、野良猫の数が多くても
引き取り数は少ない自治体もあるので、引き取り数が減ったというだけで
頭数を判断することはできません。

以下は、台東区の対策10年間の推移を表したグラフです。
※拡大してご覧ください。

台東区グラフ

台東区の場合、手術数、ボランティア数の増加に比例し、
とくにこの数年は、引取り数ゼロをほぼ達成しています。
「飼い主のいない猫対策」が進んでいる自治体の典型例
と言えましょう。

飼い主のいない猫が減っているかどうかを判断する
もう一つの指標は、路上の猫の死体数です。
台東区は、この数も減少しています。
※この場合、区道だけの死体数を数えます。

しかし将来的にも同じ状態を継続できるかどうかは、
10年後、つまり、将来の活動への注力にかかってきます。
10年かけて猫の数が減って良かったね、と安堵して
手を抜けば、その後の10年で元の状態に戻る可能性も
否定できないからです。

さらに、飼い主のいない猫については、
殺処分数や路上死数では測れない面もあります。
それは、人知れず町中で命を落としている猫、
とくに子猫の多さです。

出口対策と同時に、いえ、それ以上に飼い猫、
飼い主のいない猫の不妊去勢をさらに進めていくことが
肝要ではないでしょうか。


(m)
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テーマ:動物保護 - ジャンル:福祉・ボランティア

  1. 2018/01/01(月) 22:28:20|
  2. 地域猫
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【地域猫】~地域猫活動の問題点~

ネットで検索をかけると、地域猫活動を推奨する
記事の一方で、活動に反対する記事も多数
見受けられます。

以下は、地域猫活動の主な問題点です。

1、地域住民への押しつけ

飼い主のいない猫の問題は地域で解決すべき問題
というアプローチは、野良猫の被害にあっている住民や
猫嫌いにとっては、なぜ協力しなければいけないのか、
理解に苦しむところでしょう。
野良猫はもともとは人が棄てたのだから、という理由は
現在の首都圏では昔話です。
例えば、杉並区で行ったアンケートによれば、猫の
飼育者の9割が不妊去勢をしています。
室内飼育は8割超。

地域でノラ猫の被害を起こしているのは、不妊去勢を
せずにノラ猫にエサを与え、猫を増やしている住民に
よるものです。


防犯、防災、子育て、高齢化問題、引きこもり・・・
地域が抱える課題は沢山あります。
加えて、住民は仕事や育児、介護などで多忙です、
猫により被害を受けている住民や無関係な人々にまで
協力を求めるのは理不尽ではないでしょうか。
実際、飼い主のいない猫のTNRや世話をしているのは
猫好きの住民が大半なので、表現を変えるべきでしょう。



2.誤情報の流布

・屋外にいる猫の寿命は4~5年
 と説明されますが、これは平均寿命です。
 子猫の死亡率は非常に高いですが、1~2年生きながらえる
 ことの出来た猫は適切に世話をすれば10年以上生きます。
 現に、筆者の近隣にいる猫の多くは10歳以上生きており、
 最長寿は18歳のオス猫でした。
 猫の頭数にもよりますが、10年以上、活動が続くこともあり、
 終息までに長い年月を要します。
 数年我慢すれば終わると思っていた猫嫌いの住民に対して、
 期待を裏切ることになります。
 
 長年にわたり毎日の世話が必要な活動であるため、続ける
 うちに、世話をする人たちが転居したり、色々な事情で世話
 ができなくなったりし、世話の負担が増大します。

・トイレの設置は必要ですが、どんなに工夫をしてもすべての
 猫がそこでふん尿をしてくれるわけではありません。
 住民やボランティアがフン尿を片付けることになっていますが、
 他人の敷地にまで入って片づけることはできません。

 地域猫の管理といっても、確実にできるのは食事のあとの
 片づけと清掃ぐらいです。

3.他地域からの猫の流入

 陸の狐島でない限り、他の地域から餌を求めて、
 あるいは発情期に新たな猫が流れてきます。
 これらの不妊を怠ると、またあっという間に頭数が増えます。

 飼い主のいない猫の不妊去勢に関しては、一つの場所にいる猫の
 少なくとも75%以上を不妊しないと頭数制限の効果がでないことが
 アメリカで研究発表されています。

4.虐待の誘発

 ノラ猫の数がなかなか減らず、しかも公園などで群れている場合、
 猫嫌い、猫に迷惑を被っている人による虐待を誘発する可能性
 があります。
 人に馴れているノラ猫はターゲットになりやすいです。

5.熱心な猫活動家は少数

地域で野良猫が増えたので、不妊去勢をし、世話をする
猫好きの住民はいます。この人たちは自分を猫のボランティアとは
思っていないでしょう。
地域猫活動の主体は住民と言いつつも、
地域猫活動が活発な地域で活動を牽引しているのは多くの
場合、地域猫活動がライフワークとなっている活動家です。
毎日の大半を猫活動に費やしています。
TNR、保護、譲渡、広報、交渉、SNSなど…。
仕事などをもつ普通の猫好きに出来るレベルではありません。

アメリカのPBS(公共放送)でも、TNR活動(アメリカには
日本のような地域猫活動はありません)は大変すぎて、
ボランティアの人数が増えない、と報じていました。

以上のような問題点を考えると、
地域猫活動は決して容易い活動ではないと言えましょう。

(m)
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テーマ:動物保護 - ジャンル:福祉・ボランティア

  1. 2017/12/29(金) 22:22:07|
  2. 地域猫
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